検査科の紹介
臨床検査を行うにあたり、当検査科は検体検査部門と生理機能部門の2部門あります。これらの検査は病気の原因を調べることや治療の効果をみるために必要なもので、様々な検査を組み合わせます。
私たち臨床検査技師は昼夜を問わず緊急な医療にも対応するため、迅速で正確な検査データが提供できるように日々対応しています。 また交通機関の乏しい山間部において、時間を掛けて来られる患者様に対し、検査結果のために二度や三度も足を運ぶことが無いように、院内で実施できる項目は多く採用し、1~2時間で結果が提供でき診察に影響がでないよう努めています。
検体検査の精度管理は外部の精度管理調査のほかに、担当技師が毎日、機器の点検と内部精度管理を実施しています。生理機能検査では検査技術の向上とコミュニケーションを大切にして、検査機器より得られるデータと患者様より得られる情報を正確に早く現場へ伝えられるよう日々努力しています。
その他にも、ICT(感染制御チーム)・NST(栄養サポートチーム)などのチーム医療や健診業務にも力を入れています。
今後もより一層地域の皆様に安心・信頼していただける医療をめざし、職員一丸となって研鑽を積んでいきますので、ご指導よろしくお願いいたします。
院内で行う業務
1.検体検査(一般)
一般検査とは、主として尿や便を扱って検査を行います。
尿検査
尿に含まれている成分(タンパク、糖、潜血など)数種類の項目を検査します。
また成分精査のため、顕微鏡を用いて尿中の細胞を調べる検査も実施しています。
脳脊髄液
脳脊髄液は、硬膜、クモ膜、軟膜という3重の髄膜で包まれ、脳室内を満たす役割を果たしています。細菌性髄膜炎やウイルス感染を引き起こすと、好中球やリンパ球等の細胞が髄液中に増加します。その髄液を採取して細胞数や、タンパク、糖を測定することで、先のような感染症の診断に重要な検査となります。
2.検体検査(血液)
血液検査の主な業務は「血球算定・血液像・凝固線溶検査」です。
貧血の分類や骨髄異形成症候群・白血病などの血液疾患の診断、抗がん剤による白血球のコントロール、抗凝血薬のコントロール、DICの診断などに不可欠な検査です。
血球算定
採血された血液中の赤血球、白血球、血小板の数をカウントし、貧血や炎症の状態、血液細胞の異常などを調べています。それにより貧血や感染の有無、出血傾向などがわかります。
①赤血球数でわかること
おもに貧血です。体内へ酸素を運搬する赤血球の減少は疲労感、倦怠感、息切れなどの症状につながります。
②白血球数でわかること
一般的に感染症に罹ると白血球数は増加します。また白血球数の不足は免疫力の低下となり疾患にかかりやすくなります。
③血小板でわかること
血小板は出血したときの止血の役目をしています。血小板数の不足は出血のしやすい状態を示します。止血のしやすさも反映しますが止血は様々な生体物質の関与で成り立っています。また血小板は肝臓で作られるため、肝機能も反映されます。
血液像
血液をスライドガラスに塗抹し染色を行い、顕微鏡で白血球分類や赤血球形態などを観察します。
白血球数の異常がみられたとき,質的な異常がないかどうかを確認するための必須検査です。
形態観察により質的変化をモニターできるので、量的変化だけでは判別できなかった疾患や、量的には正常でも質的な異常を伴う疾患を推定できます。
凝固検査
採血された血液中の、止血に関わる化学物質(凝固物質)を測定し、体内の凝固能の状態(出血傾向、血栓傾向などのバランス)等を調べています。手術前検査やワーファリンなど抗凝血薬の治療効果判定などに活用されています。
3.検体検査(生化学)
血液や尿などに含まれている蛋白やブドウ糖をはじめ様々な酵素、脂質類やミネラルなどの生命活動を維持する為には欠かせない物質を測定します。これらの物質は健康状態の目安として、病気の診断はもちろん治療効果や予後の判定に重要な意味をもっています。
4.検体検査(迅速検査)
インフルエンザや肺炎球菌など早急に対応しなければいけない様な微生物を検出するために迅速抗原キットを用いて確定します。
5.検体検査(血液ガス分析)
血液中の酸素濃度や二酸化炭素濃度、pH、電解質などを測定します。主に呼吸管理のときに利用する検査です。
6.生理検査(心電図検査)
心電図とは、心臓の筋肉が全身に血液を循環させるために拡張と収縮を繰り返す時、微弱な活動電流が発生します。
その電気的刺激を記録したものが心電図検査です。虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、不整脈等を調べます。
心電図の種類
①安静時心電図
ベッドに仰向けに寝て検査します。胸に6ヶ所、両手首・両足首の4ヶ所に電極をつけます。
②負荷心電図検査
運動により心臓に一定の負荷(負担)をあたえて、心臓の筋肉の変化を心電図で観察する検査です。安静時には胸の症状(胸痛・不整脈)がないのに、運動時に胸の症状がでる病気に狭心症があります。狭心症は心筋梗塞にも移行する可能性もあり、大変危険な状態です。
狭心症が疑われる場合には、安静時には心電図に異常が出現していないことが多いため、運動により意図的に心筋に酸素が不足している状態(虚血)を誘発させ、心電図異常の有無を調べていきます。
・マスター心電図
2段の階段を一定時間(1.5分~4.5分)に年齢・性別・体重に応じた規定回数を階段昇降運動していただき、運動前後の心電図変化を調べます。運動中に胸痛・胸の違和感が生じた場合や足が痛くなった場合等、何か体調に変化が生じた場合には、ただちに教えてください。
③ホルター心電図
ホルター心電図は、胸にシール状の電極を貼り付け,それにつないだ小型軽量の装置を身につけて、24時間心電図を記録し、これを解析して観察する検査です。夜間や運動時・症状出現時に記録されている為、不整脈の性状・頻度の解析、人工ペースメーカーの機能判定に有効です。
7.生理検査(超音波検査)
超音波(エコー)検査とは、通常、人間が聞くことのできない数MHz~十数MHzの音波を使って非侵襲的に身体の病気を調べる検査です。超音波ゼリーを塗布しプローブと呼ばれる器具を当てて検査します。
①心臓エコー
心臓の動きや大きさ、逆流を防ぐための弁の状態などを観察します。エコー最大のメリットは常に拍動している心臓の様子(循環動態)をリアルタイムで画像をとおして観察できることにあります。心臓の異常を早期に見つけるためにもかかせない検査です。
②頸動脈エコー
頸部血管の形状や内膜面および血管壁の状態を観察します。これにより全身の動脈硬化の状態を把握することが可能です。脳血管障害・虚血性心疾患や動脈硬化症などの血管病を発症する疑いがある場合や早期発見に役立つ検査です。動脈硬化は自覚症状なく進行していきます。メタボリックシンドロームや生活習慣病患者の増加により注目されています。
③腎動脈エコー
腹部の大血管である腹部大動脈から分岐する腎動脈に狭窄がないかどうかを観察します。腎動脈狭窄症は腎臓の血管に動脈硬化が起こることで高血圧の原因や、腎臓の機能を低下させる原因となります。また心不全の悪化を招く危険性もあり、早期に発見し適切な治療をおこなっていくことがとても大切です。
④ 末梢血管エコー
四肢の血管疾患では動脈疾患と静脈疾患とに大別されます。動脈では主に血管の狭窄や閉塞などの動脈硬化性疾患を、静脈では弁不全や血栓性閉塞などの病変を観察します。透析のシャントトラブルなどの早期発見にも有効です。
⑤ 腹部エコー
腹部の臓器の形状や大きさ、腫瘤の有無を観察します。肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・脾臓・膀胱・前立腺・子宮・卵巣に加えて腸管などの消化管も検査対象となるため、腹腔内にあるほぼ全ての臓器を調べることが可能な検査です。腹部の中央を走行する腹部大動脈も観察が容易で、大動瘤も発見できます。
⑥ 乳腺エコー
乳房内の腫瘤や炎症の有無を検査します。乳房内のしこりが本当に腫瘤なのかどうか、腫瘤の大きさや形状を観察します。痛みもなく被ばくの心配もありませんので妊娠中の方でも安心して受けていただける検査です。乳癌に対する関心も高くなっており近年増加傾向にあります。
⑦ 甲状腺エコー
甲状腺は、首もとにある4~5cm程度の小さな内分泌臓器になります。この甲状腺の大きさや形状、しこりの有無を観察します。甲状腺疾患は女性に多く、病初期では不定愁訴に近い症状が多いのでそのような場合、一度甲状腺疾患を疑って検査をする必要があるといえます。
⑧ 体表エコー
主に皮膚・皮下組織におけるしこりなどの腫瘤や炎症性変化などを見ます。筋や腱、関節部といった運動器領域も見ることができるため、その観察部位は多岐に渡っており身体全体が検査対象となります。体表という意味では乳腺や甲状腺エコーなどもこれに分類されます。
8.生理検査(その他の検査)
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
呼吸のときの呼気量と吸気量を測定し、呼吸の能力を調べます。換気の機能を調べる基本の検査です。
通常、次の測定を行います。
- 肺活量(VC):空気をいっぱい吸入して、いっぱい吐いたときの量です。通常、年齢と身長によって計算した予測正常値と比較し、%肺活量として表します。肺の呼吸全容量です。
- 1秒率(FEV1.0%):肺活量を測定するときに最初の1秒間に全体の何%を呼出するかの値です。肺の弾力性や気道の閉塞の程度を示します。弾力性がよく閉塞がないと値は大きくなります。
この2つの指標を使い肺の換気の障害を拘束性と閉塞性および両者の混合性の3つに分けます。
②脳波検査
頭部に電極を付け、脳からの電気信号を波形として記録する検査です。けいれんを起こした時、意識障害がみられた時、症状には現れない軽い意識障害をみつけようとする時、てんかんが疑われる時などに行われ、脳腫瘍などの診断にも用いられます。
③ABI(足関節上腕血比)検査
ABI検査とは、動脈硬化に用いられる検査で、血管年齢・血管の硬さ、血管の狭窄(詰まり具合)の有無を知ることが出来ます。血管の狭窄はABI値として、血管の硬さはCAVI値として算出されます。ベッドに横になり、両腕・両足首に血圧計を、両手首に心電図電極を、胸に心音のセンサーを取り付け、測定を開始します。検査時間は5分程度で終了します。
④睡眠ポリグラフ検査(PSG)精密検査(病院での1泊入院)
睡眠時無呼吸症候群の確定診断には欠かせない検査です。大きく分けて、呼吸状態と睡眠状態を調べます。睡眠の深さや覚醒の頻度、無呼吸低呼吸の回数・長さ、無呼吸のタイプ、酸素飽和度、いびき、心電図、足の動き、体の向きによる影響など、睡眠中の体の状態を詳しく調べることができます。